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術後の合併症

わきの下に液がたまる

わきの下のリンパ液の貯留は徐々に回復しますが、ひどい時は通院が必要なこともあります

手術直後に、わきの下にリンパ液がたまることがよくあります。退院後に液がひどくたまる時は、週1~2回を目安に通院し、液を抜くようにします。通常1ヵ月位で治りますが、それ以上続く場合でも、徐々に改善します。乳房温存手術後には局所切除した場所にリンパ液がたまることがあります。

腕や肩の運動障害

運動障害は、リハビリテーションを継続することが有効です

センチネルリンパ節生検だけですんだ場合を除き、腋窩の郭清をした後は多少なりとも腕や肩が動きにくくなります。乳房温存手術は、乳房切除術に比べて全てにおいて障害の程度が軽くすみますが、運動障害や痛みを残さず、早期に回復するためには、手術直後からリハビリテーションを始めることが大切です。思うように回復しない場合でも、退院後に根気よくリハビリテーションを続けることで、ほとんど元に戻ります。センチネルリンパ節生検を行って、腋窩リンパ節の郭清を省略できた場合は運動障害やわきの下の浮腫、腕のむくみなどがごく軽度ですみQOLが向上します。

手術創部の皮膚の知覚障害

腋窩リンパ節の郭清を行うと、皮膚の知覚障害が起こることがあります

乳房切除術でも乳房温存手術でも腋窩リンパ節の郭清を一緒に行うと、術後に創部および上腕のわきの下の知覚が脱出(消失)します。この知覚脱出は、徐々に改善していきますが、知覚低下は一生残ります。また、知覚が低下しているのに、ある種の知覚が敏感になり、異常感覚を訴える方もいます。最近の手術では、腋窩リンパ節の郭清時に胸壁から出ている知覚神経〔第(1)、2、(3)肋間上腕神経〕を温存するようにしています。それでも術後の知覚低下と異常感覚は起こりますが、その程度は時間とともに改善し、術後1年目の知覚脱出の範囲と程度は神経を温存しなかった場合に比べて少なくなります。

腕がむくむ

腕のむくみは、腋窩リンパ節を郭清して取り除いたために、わきの下からのリンパ液の環流が悪くなることによって起こります。現在行われている手術では、昔のような高度のむくみを生じることはなくなっていますが、軽度のむくみが10%強位の方にみられます。また、手術を行わなかった鎖骨上下のリンパ節に放射線を照射した場合は、むくみの程度が増強されます。

腕のむくみは、リハビリテーションを続けることで、通常は、徐々に回復します

腕のむくみを治す確実な治療法はありませんが、腕をいつも高めに維持するようにし、リハビリテーションを続けることで徐々に回復します。退院した後に腕がひどくむくむ時は、むくんでいる腕の運動を少し控えめにして、前上腕をマッサージするか、肩周囲を、上腕のむくみをゆっくり吸い取るようにマッサージします。腕のむくみ用のストッキングやバンテージ(弾力性のある腕カバー)をはめるのが効果的です。心配なことがありましたら、医師あるいは看護師注)と相談してください。

注:リンパ浮腫を専門に扱っている看護師や理学療法士、あるいは施設がありますので、ご相談ください。

感染

リンパ節を郭清すると感染に対する抵抗力が落ちます

腋窩リンパ節を郭清した場合は、感染に対する抵抗力が落ちます。手術後1~ 2年、場合によっては5年も経過した後に、腕や手指の傷口から細菌が侵入したり、外傷がない場合でも、抵抗力が落ちると喉頭や咽頭などにいる細菌が血液を介して患側前腕や上腕に侵入して、丹毒たんどく蜂窩織炎ほうかしきえんが起こることがあります。特に、太っていて腕にむくみのある方は注意する必要があります。

丹毒は皮膚および皮下の炎症であり、蜂窩織炎は皮膚の深いところに生じ、急激に下方に広がる化膿性の炎症のことをいいます。感染が起こると腕に発疹がでて、痛みと発熱が生じ、体がだるくなります。そして、腕のむくみが急激にひどくなりますので、まず、腕や手指にけがをしないようにすることが大切です。感染してしまった場合は、医師の診察を受け、すぐに抗菌薬を服用します。場合によっては抗菌薬の点滴を受けると早く軽快します。感染を一度起こすと、これを繰り返すことがありますので注意が必要です。 ただし、あまり神経質になりすぎる必要はありません。常に清潔にさえしていれば、手術した側の腕から採血してもかまいません。

★退院後の生活の注意点については→参照

監修:順天堂医院 乳腺センター 霞 富士雄