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乳がん手術後の「リンパ浮腫」予防と早期発見

リンパ浮腫とは

乳がんの手術で腋窩(わきの下)のリンパ節を切除された方では、手術後に体の老廃物を運ぶリンパの流れが悪くなり、高タンパク質のリンパ液が手術した側の腕の皮下組織に溜まり、腫れることがあります。これをリンパ浮腫と呼びます。リンパ浮腫はリンパ節の切除だけでなく、放射線治療、リンパ節転移の有無を調べるセンチネルリンパ節生検が原因となることがあります。
リンパ浮腫は進行すると、完治が困難な疾患ですが、予防を心がけて発症を防ぎ、万一発症しても早期に発見することで、重症化を防ぐことができます。そのためには、患者さん本人がリンパ浮腫のリスクや早期発見の方法を知っておくことが大切です。

リンパ浮腫の基礎知識

リンパ浮腫
写真1
リンパ浮腫
写真2
リンパ浮腫
写真3

発症

手術で腋窩リンパ節を切除した方は全てリンパ浮腫を発症するリスクを有しています。

発症時期

手術後比較的早期から発症する人もいれば、10年以上経過してから発症する人もいます。

症状

腕が腫れてこわばる、違和感がある、皺の減少(消失)などがあります(写真1)。初期の段階では自覚症状のない方もいますが、指で皮膚を押すと痕がついてへこみ(写真2)、重症化すると皮膚は硬くなり、指で押してもへこまなくなります。

合併症

蜂窩織炎※(写真3)は術後約2割の方が経験する合併症で、これを契機にリンパ浮腫を起こすこともあります。リンパ浮腫が進行すると、さらにリンパ漏、皮膚潰瘍などの合併症を起こし、ますます治りにくくなってしまいます。

※ 蜂窩織炎:身体の一部に発赤・痛み・熱感などを伴う感染症です。抗生剤の投与で治りますが、重症化すると高熱が出て、敗血症に進展することもあります。

日常生活での注意点

手術後にリンパ浮腫をできるだけ発症させないようにするためには、日常生活の中で、以下のような点に気をつけ、生活することが大切です。

1. 腕を圧迫しない

手術した側の腕を局所的に締め付けるような下着・衣服、時計、指輪、ゴムバンドなど、痕がつくようなものを身につけないようにしましょう。同じ理由で手術した側の腕での血圧測定や腕枕なども避けましょう。指圧やマッサージは局所的に強い圧がかかり、皮下のリンパ管を潰すことによってリンパ浮腫を誘発することもあります。

2.腕を酷使しない

重い荷物を持つ代わりに買い物カートを使用し、家族などに協力してもらいましょう。また、過労や外傷、細菌感染からリンパ浮腫発症を招くことがありますので、家事や仕事であまり無理をせず、ゆったり暮らすことが大切です。

3. 長時間じっとしない、腕を下げない

長時間同じ姿勢を保つ場合には、時々肩や首回し、軽いストレッチを行うなどしてリンパの流れを促しましょう。また、休息時やテレビを観ている時などは、ひじを大きなクッションに乗せるなどして、心臓よりも高い位置にする工夫が必要です。

4. 手術した側の腕の皮膚を傷つけない

細菌感染によるリンパ浮腫発症を防ぐため、できるだけ皮膚を傷つけないように心がけましょう。

  1. ケガや虫刺され、ペットの爪による引っかき
  2. 日焼け
  3. はり、灸、湿布やテープによるかぶれ
  4. 深爪
  5. 脱毛処理
  6. 皮膚の乾燥

屋外での作業(ガーデニングなど)は長袖の衣類とゴム手袋を着用し完全武装で楽しみましょう。乾燥を防ぐため、お手持ちのミルクなどを用いて、日ごろからスキンケアに心がけましょう。

5. 熱いお風呂、サウナ、岩盤浴などはほどほどに

体を温めると水分の循環量が増えますので、熱すぎるお風呂やサウナなどはほどほどに切り上げましょう。

6. 体重管理で腫れにくい体を作る

肥満があると、脂肪が体表のリンパ管を圧迫し、リンパの流れがますます悪くなります。食べ過ぎに注意し、標準体重(およそ身長-100 を目安に)を超えないように努めましょう。

早期発見のための自己チェック

リンパ浮腫を早期に発見する最も確実な方法は、患者さん本人が体重と腕の太さの管理を行うことです。可能であれば、手術前に両腕の図に示した4カ所のサイズを体重とともに測定し、手術後も自覚症状がなくても3カ月に1回程度は同じ部位を同じ時間帯(起床時など)に測定することを習慣づけましょう。手術後の方は今から測定を開始しましょう。初回以降は手術した側の腕を中心に測定します。測定部位のいずれか1カ所でも5~10mm以上増えたら要注意です。再測定しても増えたまま、あるいは増え続けるようなら主治医に相談しましょう。

図.腕の測定部位 注1

リンパ浮腫 自己チェック

注1:あくまでも目安で、毎回同じ所を測ることが重要です。注2:(1)手のひらは測りやすい方をどちらか1カ所測ってください。

リンパ浮腫の治療法

リンパ浮腫の治療は、「浮腫を減らし、減った状態を保つ」を繰り返し、サイズを減らしていくことが原則で、皮膚が硬くなっていない早期の段階で治療を開始すると、より大きな治療効果が得られます。治療法としては、圧迫、リンパドレナージ、圧迫下での運動療法、スキンケアなどがあります(表)。なかでも、圧迫はリンパ浮腫に対する最も基本的な治療法で、日常活動時の弾性着衣(スリーブ、グローブなど)の装着や弾性包帯による圧迫(中等度以上の進行例)は、大きな効果が期待できます。
この弾性着衣や弾性包帯は現在、保険適応(療養費扱い)となっています。一方、溜まったリンパ液を手でリンパ管に流し込むリンパドレナージという治療法は、単独では治療効果が長時間持続せず、圧迫の適切な技術を提供できる医療者の数も少ないため、多くの場合、圧迫の補助的手段として用いられます。各種治療を受けられる場合には、下記サイトで最寄りの医療機関を探し、お問い合わせください。

表.リンパ浮腫の治療法

圧迫 弾性着衣(医療用スリーブ・グローブなど)や弾性包帯
リンパドレナージ 溜まったリンパ液を徒手的に深部リンパ管に流し込む
圧迫下での運動療法 圧迫した状態でのストレッチ運動など
スキンケア 皮膚の保湿を心がけ、傷や感染から守る
減量 標準体重(およそ身長-100 が目安)を超えないように

リンパ浮腫に関する不安や疑問がある場合には主治医や看護師に相談してください。

監修:貝塚病院 乳腺外科部長 北村 薫