乳がんと遺伝の関係
#遺伝性乳がん #検査・診断遺伝性乳がんと「HBOC」の割合
乳がんの罹患数は年々増加しており、日本では、1年間に約9万人の方が新たに乳がんを発症しています。このうち、約7〜10%は、遺伝的な要因が大きく関係している「遺伝性乳がん」と考えられています。
なかでも、最も多くの割合を占めているのが「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」と呼ばれる遺伝性乳がんです。
HBOCの方では、「BRCA1」と「BRCA2」と呼ばれる遺伝子のどちらかに「病的な変異」があることが知られています。
(HBOC:Hereditary Breast and Ovarian Cancer)
遺伝性乳がんとHBOCの割合

2) Kauff ND. Management of BRCA-Negative Hereditary Breast Cancer Families. Hereditary Breast Cancer. Isaacs C. CRC Press, New York, , p311-318
HBOCの特徴
HBOCの方では、乳がんだけでなく、卵巣がんを発症するリスクが将来的に高まることが知られています。
また、HBOCの方では、若くして乳がんを発症しやすい(若年性乳がんが多い)ことや、両方の乳房にがんを発症しやすいこと、片方の乳房に複数回乳がんを発症しやすいこと、トリプルネガティブ乳がん※が多いことなど、通常の乳がんとはやや異なる傾向があります。男性も乳がんになることがありますが、その多くはBRCA遺伝子に病的な変異があるとされています。その他、家系内に乳がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がんになった人がいる、などの特徴もあります。
※トリプルネガティブ乳がん:がん細胞に2つの女性ホルモン受容体(エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体)が認められず、HER2タンパクの過剰発現もないタイプの乳がん。
HBOCの特徴3)
- 乳がんと卵巣がん両方を発症しやすい
- 若くして乳がんを発症しやすい
- 両方の乳房にがんを発症しやすい
- 片方の乳房に複数回乳がんを発症しやすい
- トリプルネガティブ乳がんが多い
- 男性で乳がんを発症しやすい
- 家系内に乳がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がんになった人がいる など
がん発症リスクの比較
一般的な日本人 | BRCA1遺伝子変異 | BRCA2遺伝子変異 | |
---|---|---|---|
乳がんにかかるリスク | 生涯で9%4) | 70歳までに57%5) | 70歳までに49%5) |
卵巣がんにかかるリスク | 生涯で1%4) | 70歳までに40%5) | 70歳までに18%5) |
前立腺がんにかかるリスク | 生涯で9%4) | 70歳までに25%6) | 65歳までに~15%7) |
5) Chen S, et al. J Clin Oncol. ; 25(11): 1329-1333
6) Struewing JP, et al. N Engl J Med. ; 336(20): 1401-1408
7) Kote-Jarai Z, et al. Br J Cancer. ; 105(8): 1230-1234
加齢による乳がん・卵巣がん発症リスクの変化
HBOCの方では、乳がんや卵巣がんにかかるリスクが、加齢とともに高まることが知られています。

【参考】HBOCの可能性が高いかどうかを確認するために
HBOCの可能性が高いかどうかは、下記の「かんたんチェック」で確認できます9)。ただし、乳がんと診断された方に関しては、こちらの表に該当しないこともあります。詳しくは担当医師にご相談ください。
9) 日本HBOCコンソーシアム. かんたんチェック