遺伝学的リスク
#遺伝性乳がん
乳がん患者さんのなかには、ご自身の母親や姉妹も乳がんだったというようなケースがあります。このような乳がんの発生には、遺伝的な要因が強く関与していることがあります。
全乳がんの約7~10%が遺伝性の乳がんであると言われており、遺伝性乳がんのうち約50%を占めるのが、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)です。

現在では、下の表に示したような乳がんに関連のある多くの遺伝子が見つかっています。
なかでもBRCA1 および BRCA2の2つの遺伝子がよく知られており、これらの遺伝子はいずれもDNAの修復に不可欠の要素と考えられています。
BRCA1、BRCA2遺伝子に病的変異がある場合は乳がんだけでなく、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がんなどを発症するリスクも高まると言われています。また、BRCA1 もしくは BRCA2遺伝子の病的変異が確認された場合に、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)と診断されます。
乳がんと関連がある遺伝子
遺伝子 | 乳がんの生涯発生リスク | |
---|---|---|
遺伝子変異による発症リスクが高度である原因遺伝子 (高度易罹患性遺伝子) |
BRCA1 | 40~80% |
BRCA2 | 20~85% | |
TP53 | 56~90% | |
PTEN | 25~50% | |
STK11 | 32~54% | |
CDH1 | 60% | |
遺伝子変異による発症リスクが中等度である原因遺伝子 (中等度易罹患性遺伝子) |
ATM | 15~20% |
CHEK2 | 25~37% | |
PALB2 | 20~40% | |
BARD1, BRIP1, MRE11A, NBN, RAD50, RAD51C, XRCC2, RAD51D, ABRAXAS, MLH1, MSH2 | 遺伝子により異なる |