遺伝性乳がん卵巣がん
症候群(HBOC)になって‐私の選択、私の思い‐
料理家栗原 友さん
栗原 友さんは2019年にトリプルネガティブ乳がん・ステージⅡと診断されました。その後BRCA遺伝子の検査を受け、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)であることが判明しました。今回のインタビューでは乳がん、またHBOCであるご自身の経験を振り返っていただき、BRCA検査、乳房切除手術、卵巣・卵管の予防摘出手術をどのように考えて受けることを決めたのか。医療関係者やご家族とはどのようなコミュニケーションをとられたのか。現在に至るまでの心境について語っていただきました。
インタビューより抜粋※
主治医から「その検査(BRCA検査)をすることで、将来、自分がまたがんになるリスクがあるか・ないかが分かるということは、将来のことをいろいろ設計もできるし、備えることもできるし、あと治療の方針とかも立てやすいし、どうでしょうか?」と言われて、受ける事を決めました。
遺伝子検査の結果が出て、主治医から「あなたはこのタイプです。BRCA1」と言われて、「卵巣と乳がんのリスクが高いです*。左にがんがあって、その左のがんをとるときに、同時に右側の乳房の予防切除もできますが、どうしますか?」 と聞かれて予防切除しました。
卵巣については、「それは同時にはできないから、また後日ですけど、やりますか?」と言われて、いろんな思いはあったけど「もちろんやります」と答えました。
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Antoniou A, et al. Am J Hum Genet. 2003; 72(5): 1117-1130.
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一部改変
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インタビュー内容は栗原さんの個人的な見解を含みます
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検診などに関する情報は医療機関で正しい情報を確認ください
プロフィール
1975 年 東京都出身 料理家、鮮魚卸売
2005 年からレシピ紹介を始め、料理教室、執筆など活動の幅を広げる。
2021 年には築地の鮮魚店「クリトモ商店」をオープンするなど、経営者としても精力的に活動。
2024 年の春からは、東京農業大学の学生として発酵化学を学ぶ。
関連情報
参考情報
ステージ
病気の進行度合い(病期[ステージ])は、今後の治療法に大きく影響します。病期(ステージ)は0期~IV(4)期まであり、乳房のしこり(原発巣)の大きさや、わきの下のリンパ節への転移の有無、他の臓器への転移の有無といった指標の組み合わせにより病期(ステージ)は異なります。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)
BRCA遺伝子の病的な変異が、親から子どもに受け継がれることで起こる病気のことで、乳がんや卵巣がんを発症しやすい特徴を持つ。また、若年で発症する傾向があり、血縁者にも乳がんや卵巣がんなどに罹患した人が存在するケースがある。一般的に200~500人に1人が、 HBOCに該当すると言われている。
一般社団法人 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構,遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)をご理解いただくために ver.2023_1
BRCA検査
BRCA遺伝子を調べる検査であり、病的な変異があった場合、“HBOC”と診断される。HBOCと診断された乳がん患者は、新たながんの発症を抑えるために乳房や卵巣・卵管を切除したり、早期発見のためにMRI検査を定期的に行うといった策を講じることできる。また、乳がんの薬物治療選択の判断にも用いられる。
一般社団法人 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構,遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)をご理解いただくために ver.2023_1
ブレスト・アウェアネス
「乳房を意識する生活習慣」という意味。乳がんの早期発見・早期治療につなげるためにとても大切で、乳房のセルフチェックを日常生活の中で気軽に取り込み、習慣づけることが大切。乳房のセルフチェックは、入浴や着替えの時、寝る前などにおこなう。